開封されると遺言は無効になる?

2019.09.11 UPDATE

コラム執筆者:弁護士 細越善斉

事例|発見した遺言書を勝手に開けてしまったケース

兄の相続です。兄は結婚しておらず子供もいませんでしたし、両親もすでに他界していたので、相続人は私(弟)と姉の2人だけです。

先日、兄の部屋で遺品の整理をしていたのですが、机の奥の方から「遺言書」と書かれた封筒が出てきました。誰の遺言かもわかりませんでしたし、興味もあったので、封がされ、印鑑も押されていましたが、カッターで開けて中身を確認してみました。そうしたところ、中身は「遺産はすべて弟に相続させる」と書かれた、兄の遺言でした。

そこで、姉に、兄の遺言があったこととその記載内容を話したところ、姉からは、「勝手に遺言書を開けてしまったからあなたは相続できない!」「遺言も無効になる!」と言われてしまいました。

確かに、開封することに少し罪悪感はありましたが、やはり遺言書を勝手に開封することは違法なのでしょうか?また、相続ができなくなり、遺言も無効になってしまうのでしょうか?

架空の事例です

裁判所外での開封は禁止されている

自筆証書遺言を作成する場合、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、押印をしなければいけません(民法968条1項)。この様式を欠く遺言は無効となります(なお、相続法改正により、自筆証書遺言に目録を添付する場合には、その目録は自書の必要がなくなりました。同条2項参照。)。

また、遺言書に封印がされている場合、家庭裁判所において開封しなければいけません。これに違反した場合、5万円以下の「過料」(行政上の秩序罰)の制裁を受ける可能性があります。

民法条文

1004条3項
封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

1005条
前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。

以上によると、事例のケースでは、遺言書を勝手に開封してしまった弟は、過料に処せられる可能性があります。

開封しても遺言が無効になるわけではない

もっとも、遺言書を勝手に開封したとしても、偽造・変造・破棄・隠匿をしたわけではないため、相続人の欠格事由(民法891条参照)にあたるわけではなく、相続権を失うわけではありません。

民法条文

891条
次に掲げる者は、相続人となることができない。
1 ・・・
・・・
5 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

また、遺言は被相続人の最終の意思表示であり、可能な限り尊重されるべきものです。そのため、勝手に開封されてしまったとしても、それ自体で遺言自体が無効になってしまうということもありません。

検認により遺言の有効性が確認されるわけではない

自筆証書遺言が発見された場合、遺言書の保管者又はこれを発見した相続人が裁判所に検認を請求しなければいけませんが(民法1004条1項参照)、ここでよく、「検認を受けたから遺言は有効だ」と言う方がいます。しかし、それは間違いです。

そもそも、検認とは、家庭裁判所と相続人が遺言書の存在とその内容を認識するとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付や署名など検認日現在における遺言書の形式や内容を明確にしておき、それ以降の遺言書の改ざん等を防止するための手続です。

つまり、検認日における遺言書の現状を固定するだけであり、遺言の有効・無効について判断されるわけではありません。そのため、検認手続を経た場合でも、遺言が無効である場合は当然あり得ます。

この点は、勘違いされる方が多いようなので、注意が必要です。

  • 01家庭裁判所外で遺言書を開封することは禁止されており、違反した場合は過料
  • 02もっとも、開封しても相続権は失わず、遺言も無効になるわけではない
  • 03検認手続により遺言の有効性が確認されるわけではない

まとめ

以上のとおり、封印された遺言書は家庭裁判所で開封しないと過料の制裁を受けてしまう可能性がありますが、開封してしまったからといって、相続権を失うわけでも、遺言自体が無効になるわけでもありません。

事例のケースでは、弟は勝手に遺言書を開封してしまっているので過料に処せられる可能性はありますが、相続権を失わず、遺言自体も無効になるわけではありません。

コラム執筆者:弁護士 細越善斉

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