誰が会社の株主?

2020.09.15 UPDATE

コラム執筆者:弁護士 細越善斉

事例|現在の株主が誰か分からなくなってしまっているケース

私は昭和56年に会社を創業し、それから40年間必死に働いてきましたが、もう 70歳になったので、事業承継を考えています。業績は好調なので会社を潰したくありませんが、後継者となる親族や従業員がいません。そこで、銀行担当者に相談したところ、会社を第三者に売却(M&A)することを提案されました。

早速、紹介を受けたM&A仲介の会社の方とお会いしてみましたが、「御社は社長以外に株主名簿に10人の株主がいますが、この株主の方たちから株式を取得できないと、会社を売却することは難しいですよ」と言われてました。。


確かに、会社設立時にはたくさんの親族に株主になってもらいましたが、実際には、ほとんど株主としての活動をしていない方たちばかりです。私は、会社の株式の8割を保有しています。

このような場合に、親族から株式を取得する方法や株主から排除する方法はあるのでしょうか。

 ※架空の事例です

はじめに

事業承継を円滑に実現するためには、少数株主の問題を解決する必要があります。その対策としては、そもそも少数株主が発生するのを防ぐ方法と、分散した株主を排除する方法が考えられます。

それでは以下で、詳しく見ていきましょう。

目次

 ■ 誰が会社の株主か分からない
 ■ 事業承継と少数株主
 ■ 少数株主を発生させない方法
 ■ 少数株主を排除する方法(スクイーズアウト)
   ・特別支配株主の株式売渡請求
   ・株式併合
   ・その他

 

誰が会社の株主か分からない

「会社の現在の株主が誰か分からない」という問題は、実はそれほど珍しいことではありません。

平成2年の改正前商法は、株式会社を設立するためには発起人(設立時の株主)が7人以上必要とされていました。そのため、発起人の頭数をそろえるために、創業者が親戚や友人に株主になってもらう、ということがよく行われていました。社歴の長い会社の場合、確定申告書にたくさんの株主が記載されている場合がありますが、それは、この規定の名残りということが言えるでしょう。

株主に相続が発生すると、株式も相続人に承継されます。そして、遺産分割により株式の取得者が決まるまで、株式は相続人間で「準共有」となります。つまり、相続人が法定相続分で株式を持ち合っている、という状態になります。そして、相続人にさらに相続が発生してしまうと、その相続人も準共有者となりさらに準共有者の数が増えてしまいますし、相続が繰り返されると、そもそも誰が相続人で準共有者なのか、正確に把握するのが難しくなってしまいます。

このように、遺産分割を行わないまま株主に順次相続が発生してしまうと、現在の株主が誰か分からない、という事態になってしまうわけです。

事業承継と少数株主

株式会社の所有者は株主であり、株式会社の通常の意思決定を普通決議(議決権の過半数)、重要な意思決定を特別決議(議決権の2/3以上)で行います。そのため、事業承継を行う場合には、後継者もしくはM&Aの買側に、基本的には株式の全部を承継するのが望ましいといえます。

少なくとも、議決権の2/3以上の株式を承継できないと特別決議が否決されてしまう、いわゆる拒否権を持たれていることになるため、そのような場合には、円滑な事業承継が実現できません。

そこで、円滑な事業承継のためには、少数株主の問題を事前に解決しておく必要があります。

まず、最初に考えるべきは、少数株主から任意に株式を買い取る、ということです。少数株主が保有する株式の売却に応じてくれるのであれば、あとは会社法の必要な手続きを踏んで会社もしくはオーナーが株式を取得すれば、少数株主の問題を解決することができます。

もっとも、会社法や定款に規定がない限り、少数株主から一方的に株式の売渡しを求めることができるわけではありません。あくまで、少数株主に売却の意思があって初めて任意に買取りができるに過ぎず、言わば少数株主次第であり、非常に不確実な方法と言えます。

実際にお手伝いをしたケースでも、少数株主に対し株式買取交渉を持ち掛けたものの、感情的理由、ということで取り付く島もなく断られてしまい、結局、少数株主問題を解決できなかった、という事例もあります。

このように、少数株主からの株式の買取りは、原則として法的に強制できるわけではなく、あくまで交渉事であり、非常に不確実な方法ということになります。そして、交渉事ですので、交渉当事者間の関係性、ということがとても重要となってきます。

例えば、もともとはオーナーの依頼で株主になったという場合、そのオーナーからの買取打診であれば、少数株主としてもオーナーとの関係性を踏まえ検討するため、買取交渉がスムーズに進む可能性があります。一方で、オーナーに相続が発生した後にその相続人からの買取打診の場合、当事者間の関係性が希薄化してしまっているため、少数株主側が交渉に応じてくれないかもしれません。

そのため、少数株主問題については、事業承継を行う前に、現オーナーの段階で解決しておくべき問題である、とお考えいただき、取り組んでいただくのがよいと思います。

少数株主を発生させない方法

少数株主問題については、そもそも少数株主を発生させない、という対策が考えられます。

例えば定款に、相続等で株式を取得した者に対して、その株式を会社に売り渡すように請求することができると定めておく、という対策です。このような定款の規定があれば、仮に株主に相続が発生した場合、会社の特別決議に基づき、会社はその相続人に対して「株式を売ってください」と言うことができることになります。これにより、相続による株主の分散を防ぐことができるわけです。

もっとも、当初から定款に相続人等に対する売渡請求の規定しておくと、仮に支配株主側(オーナー側)に相続が発生した場合に、少数株主だけの特別決議で売渡請求を決定できてしまうことになり、少数株主が支配株主に昇格してしまうリスクがあります。

このような事態を防ぐためには、少数株主の相続発生後に定款変更し、相続人に対する売渡請求を規定したうえで、少数株主の相続人に対し売渡請求を行う、というのが安全な方法かもしれません。

少数株主を排除する方法(スクイーズアウト)

次に、実際に発生している少数株主を、会社法の規定に基づき株主から締め出す、いわゆるスクイーズアウトという対策が考えられます。

特別支配株主の株式売渡請求

会社法の改正により、会社の株式の90%以上を保有している「特別支配株主」については、少数株主に対し株式の売渡しを請求することができるようになりました(会社法179条)。

少数株主の同意なく一方的に株式を取得することができるため、90%以上の株式を保有している場合は、この規定に基づき少数株主問題を解決することができます。

株式併合

また、会社法の改正により少数株主保護のための規定(事前・事後の書類の備置や、差止請求、反対株主の株式買取請求、価格決定申立の各手続など)が整備されたため、株式併合によるスクイーズアウトもよく利用されています。

これは、各少数株主の保有株式数(例えば、5株)を超える株式数を1株に併合するという併合割合(例えば6株を1株に併合)で株式併合を実施すると、少数株主については1株未満となりますので、端数に相当する金銭を払って非株主化する、という手法になります。

なお、株式併合を決議するためは株主総会の特別決議(議決権の2/3以上の賛成)が必要になります。支配株主側(オーナー側)の株式保有割合が2/3未満の場合は、株式併合の方法によることは難しいため、まずは2/3以上の保有割合になるまで、任意交渉により地道に株式を買い集めていくしかありません。

その他

その他、現金対価株式交換や全部取得条項付種類株式の方法によりスクイーズアウトする方法もあります。少数株主問題を解決するためにどのような方法を選択するかについては、会社の実情によっても異なってきますので、まずは弁護士等の専門家にご相談されることをおススメいたします。

  • 01円滑な事業承継のために少数株主問題は現オーナーの段階で解決すべき
  • 02定款で相続人に対する売渡請求を規定することにより株主の分散を防ぐ
  • 03株式買取交渉に失敗したら、スクイーズアウトの方法で少数株主を排除する

まとめ

いかがでしたか。少数株主問題は事業承継の支障となりますので、事業承継の前提として、①少数株主と株式の買取交渉を行い、買取交渉が決裂した場合には、②少数株主に相続が発生した際に定款変更して株式売渡し請求を行うか、③株式の保有割合が2/3以上の場合にはスクイーズアウトの方法により少数株主を締め出す方法により、現経営者の段階で少数株主の問題は解決しておくべき、といえます。

事例のケースでは、まず他の株主9人との間で、事業承継の準備のために必要であること、そのために株式を譲渡して欲しいことを真摯に説明し、任意の買取りを目指すのがよいのではないでしょうか。オーナーの声掛けで株主になってくれた方であれば、オーナーとの関係性を踏まえ、売却に応じてくれるかもしれません。しかし、相続等でオーナーとは直接の面識がない株主の場合、売却に応じてくれない、あるいは高額の対価を要求される可能性があり、その場合は、株式併合の方法により(8割の株式を保有しているため、株式併合の決議は行えます。)、9人の株主を締め出すしかないでしょう。

少数株主の問題は、先延ばしにするとさらに株主が増えてしまうリスクがありますし、株価が上がってからスクイーズアウトをすると少数株主に支払う対価も高額となってしまいます。あくまで現経営者において解決しておくべき課題であることをご認識いただき、早期に取り組まれることをおススメいたします。

コラム執筆者:弁護士 細越善斉

この記事をSNSでシェアする

  • Facebook
  • Twitter

弁護士への無料相談はこちらCONTACT US

ご相談内容などをご入力の上、お問い合わせください。後日ご連絡差し上げます。
※ご入力いただいた個人情報は、お問い合わせに対応する目的の範囲内でのみ利用させていただきます。

カテゴリーから記事を探す

FOLLOW US

  • Facebook
  • Twitter