遺産分割の当事者から脱退するための方法は?

2019.07.16 UPDATE

コラム執筆者:弁護士 細越善斉

事例|遺産分割協議に参加したくないという相続人がいるケース

先日、姉が亡くなりました。姉は生涯独身で、両親は既に他界しているので、相続人は、私と弟、妹の3人でした。


3人で姉の遺産分割協議を何度か行いましたが、弟は、「俺は姉と一番仲が良かったので、姉も俺が遺産を多く取得することを望んでいるはずだ」と言っていて、姉が亡くなってからもう半年が経ちましたが、一向に遺産分割協議が進みません。。

妹は、そのような状況に嫌気がさしたようで、長男の私にすべて任せるので自分は何もいらない、早く兄弟間のいざこざから解放されたい、と言っています。

私としては、弟の好き勝手にはさせたくないという思いがある一方で、妹をこれ以上、弟とのいざこざに巻き込みたくありません。

このような場合、妹だけが遺産分割協議の当事者から脱退するいい方法はないのでしょうか?

架空の事例です

はじめに

遺産分割協議は、相続人全員で行う必要がありますが、相続を望まない相続人は、相続放棄や相続分の譲渡・放棄をすることにより、遺産分割の当事者から脱退することができます。

それでは以下で詳しく見ていきましょう。

目次

 ■ 遺産分割協議は相続人全員で行う必要がある
 ■ 遺産分割の当事者から脱退する方法
 ■ 相続分譲渡のための手続き

遺産分割協議は相続人全員で行う必要がある

事例の妹さんのように、お金の問題ではなく、相続の紛争から解放されたいと考える相続人もいらっしゃると思います。実際に、当事務所にご相談にいらっしゃる方でも、そのようにお考えの方が一定割合でいらっしゃいます。

しかし、遺産分割協議は、相続人が全員で行わなければならず、1人でも相続人を除いて行った遺産分割協議は無効です。そして、誰が相続人かは、基本的には戸籍等を調査すれば分かります。

そのため、戸籍調査で判明した相続人全員で遺産分割協議を行い、協議が成立せず遺産分割調停を申し立てる場合でも、相続人全員を当事者として調停を申し立てなければいけません。

遺産分割の当事者から脱退する方法

相続人は、被相続人との一定の身分関係にある場合、当然に相続人となりますが、中には、相続することを望まない方もいます。そのような相続人は、まず、①遺産分割協議の結果として、自分は相続財産を取得しないとの内容で合意することが考えられます。

しかし、本人はそれで納得していても、他の相続人間で遺産分割の話がまとまらないと、結局は遺産分割協議が成立しないので(遺産分割協議の成立には相続人全員の合意が必要です)、遺産分割調停で解決せざるを得ず、そうすると、相続を望まなかった相続人についても、当事者として遺産分割調停に関与し続けなければいけないことになってしまいます。

そこで次に、遺産相続の関与から解放されるために、②相続放棄(民法915条1項本文)をすることが考えられます。

相続放棄とは、被相続人の財産を一切相続せずに放棄する、という手続であり、相続開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄すると申し出ることにより行います(同915条1項本文、同938条)。

この手続により相続権を喪失、つまり相続人とはならなかったものとみなされますので(同939条)、遺産相続の関与から解放されることになります。

もっとも、家庭裁判所への手続が必要となる点で手続き面での負担は生じてしまいます。そこで、ほかに遺産分割協議の当事者から脱退するための方法として、③相続分の譲渡(民法905条)や相続分の放棄、という方法が考えられます。

相続分譲渡のための手続き

相続分の譲渡とは、遺産に対して相続人が持っていた相続割合を、譲受人に移転してしまうことです。この場合の「遺産」には、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産も含みます。

譲受人が他の相続人の場合には、譲渡を受けた分だけ譲受人の相続割合が増えることになり、譲受人が相続人ではない第三者の場合には、今後は、その譲受人を含めて(譲受人を相続人として)、遺産分割協議を行う必要があります。

相続分の譲渡をすることで、譲渡人は遺産に対する相続割合を失いますので、それ以降は、遺産分割の当事者になる必要がありません。これにより、遺産分割の当事者から脱退することができることになるのです。

相続分の譲渡は、相続放棄と異なり、いつまでに行わなければいけないという時期の制限はなく、また、家庭裁判所の手続も不要なため、いったん遺産分割協議に参加したものの、相続人間の人間関係が鬱陶しくなり途中で遺産分割協議から離脱をしたい、というような場合にも行うことができます。

遺産分割調停の場合には、「相続分譲渡証書」(譲渡人は署名及び実印での押印)と譲渡人の印鑑証明書を添付することで、相続分の譲渡をした相続人は、遺産分割調停の当事者から脱退することができ、それ以降の調停期日への出席や話合いへの参加も不要となります。

なお、相続分の放棄によっても、遺産分割の当事者から脱退することができます。

相続分の放棄とは、遺産に対する相続人の相続割合を放棄する、というものです。相続分の譲渡が特定の譲受人が譲渡者の相続割合を取得するのに対し、相続分の放棄は、放棄者の相続割合を他の相続人がその相続割合に応じて取得することになります。

民法上に規定はなく、実務でも行われることは多くはありませんが、相続分の放棄もできる、ということは覚えておいても損はないと思います。

  • 01相続放棄によりはじめから相続人ではなかったことになる
  • 02相続分の譲渡や相続分の放棄でも遺産分割の当事者から脱退できる
  • 03相続分の譲渡を行う場合は相続分譲渡証書と印鑑証明書を用意する

まとめ

いかがでしたか。遺産分割の当事者から脱退するためには、相続放棄のほか、相続分の譲渡や相続分の放棄をする、という選択が考えられます。

事例のケースでは、相続開始からすでに半年が経過しているため、原則として相続放棄ができません。
もっとも、次女は長男にすべて任せると言っていますので、次女のご意向を踏まえ、次女から長男に対し相続分の譲渡をしてもらい、次女を遺産分割の当事者から脱退させてあげるのがよいのではないでしょうか。

そのためには、相続分譲渡証書を作成し、次女に署名と実印で押印をしてもらい、さらに印鑑証明書1通を交付してもらってください。それにより、調停や相続手続において次女の関与が不要となりますので、好き勝手を言う弟と、じっくりと争うことができることになります。

もちろん、早期解決が望ましいことは言うまでもありません。。

コラム執筆者:弁護士 細越善斉

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