遺産分割協議書作成の注意点

2019.07.16 UPDATE

コラム執筆者:弁護士 細越善斉

事例|遺産分割協議書に契印がなかったケース

父が亡くなりました。相続人は、母(妻)と私(長男)、弟(次男)の3人です。遺産は預金と株式と自宅マンションです。


3人で話し合い、母が自宅マンションと預貯金の一部を、私が株式を、弟は預金の残額を取得するとの内容で全員OKだったので、早速その内容で遺産分割協議書を作成し、全員で署名捺印しました。

その後、母の代わりに自宅マンションの相続登記を司法書士に相談したところ、遺産分割協議書の1枚目と2枚目に契印がないので、この協議書だと母名義の相続登記ができません、と言われてしまいました。。

弟は地方に住んでいるため、再度押印をもらうためには時間がかかってしまうのですが、遺産分割協議書が複数ページになる場合、必ず契印をしなければいけないのでしょうか?

架空の事例です

はじめに

相続手続をスムーズに進めるためにも、遺産分割協議書には、必ず各相続人が氏名住所を自署し、実印で押印して、さらに複数ページになる場合は実印で契印をしておきましょう。

以下、詳細について見ていきましょう。

目次

 ■ 遺産分割協議書を作成する理由は?
 ■ 遺産分割協議書には形式面の要件はある?
 ■ 作成時のポイント

遺産分割協議書を作成する理由は?

遺産分割協議は、必ず書面を作成しなければ成立しないわけではなく、口頭によっても成立します。

しかし、口頭の場合、協議が成立したことを客観的に証明することが難しいため、後から「協議は成立していない」と他の相続人が主張するなどして、遺産分割協議の成否をめぐってトラブルになってしまう可能性があります。

そこで、遺産分割協議が成立した場合は、事後の紛争を防止するためにも、遺産分割協議書の作成をお勧めします。というより、必ず作成するようにしましょう。

遺産分割協議書には形式面の要件はある?

遺産分割協議書は、遺産分割協議の成立を示す客観的な証拠であるとともに、相続登記や預金の解約手続など、相続手続の際に必要となる書類です。

遺産分割協議の成立を証明するという意味では、必ずしも遺産分割協議書に実印が押印されている必要はなく、また、氏名欄についても必ず自署する必要はありません。そして、法律上も、遺産分割協議書の形式面について要件が定められているわけではありません。

しかし、例えば相続人の氏名住所がパソコンで印字されていたり、押印が認印だったりすると、誰でも作成できてしまうため、相続人本人の意思であることが必ずしも明らかではありません。

そのような場合、協議書は無効であり、遺産分割協議は成立していない、と判断されてしまう可能性もあります。

他方で、相続人本人が氏名住所を自署し、実印で押印している場合であれば、本人の意思であることが相当程度担保されますので、無効とされる可能性は格段に下がります。

そこで、事後の紛争防止の観点からは、氏名住所を自署し、実印で押印することが望ましいですし、遺産分割協議書が複数ページにわたる場合は、差替え等を防止するため、契印をしておくのが望ましいでしょう。

これに対し、相続登記や預金の解約などの相続手続においては、相続人の意思であることを制度的に担保するために、遺産分割協議書の形式的な要件として、必ず実印での押印が必要とされ、印鑑証明書の添付が必要となります。さらに、遺産分割協議書が複数ページになる場合には、必ず契印が必要とされています。

以上のように、遺産分割協議書の形式要件が法律に定められているわけではありませんが、相続手続では必要になるため、遺産分割協議書には、必ず自署し、実印で押印して、さらに複数ページにわたるときには契印をするようにしましょう。

なお、複数ページにわたる場合でも両面印刷を利用するなどして、契印をしなくていいようにするという対応も考えられます。

作成時のポイント

遺産分割協議書には、誰が何を取得するのかが分かるように明確に記載してください。

例えば、不動産であれば、所在・地番・地目・地積等により、また、預金口座であれば、金融機関・支店・種類・口座番号・名義等により財産を特定できるように記載しておくのが望ましいです。

また、被相続人の氏名、本籍、最後の住所地、死亡日等など、被相続人の情報を記載し、誰の相続手続かを明らかにして、登記名義人や預金名義人との同一性を担保できるようにしておきましょう。

そして、署名欄に記載する相続人の住所は、印鑑証明書の記載どおりに記載しておくのがよいと思います。

なお、遺産分割協議書を相続登記で使用する場合、遺産分割協議書の内容として、遺産分割協議の当事者が相続人で間違いないことや被相続人と登記名義人の同一性を確認しておいた方がよい場合がありますので、遺産分割協議書の作成前に、相続登記を依頼する司法書士に記載内容を確認しておくことをおススメします。

  • 01事後の紛争防止のため、遺産分割協議書を作成しておくべき
  • 02法律上、遺産分割協議書の形式面の要件はない
  • 03遺産分割協議書には、自署し、実印で押印し、契印もしておくべき

まとめ

いかがでしたか。遺産分割協議が成立した場合、事後の紛争防止のために、また、相続手続をスムーズに進めるためにも、是非、遺産分割協議書を作成しましょう。そして、遺産分割協議書には、必ず各相続人が氏名住所を自署し、実印で押印して、さらに複数ページになる場合は実印で契印をしてください。

事例のケースでは、遺産分割協議書に契印がありませんので、残念ながら、相続登記の添付書類としては使用できません。そのため、遠方にいる弟に郵送して、再度、遺産分割協議書への署名・押印・契印してもらう必要があります。

なお、2ページの遺産分割協議書であっても、A3の用紙に1枚でプリントアウトし作成する場合には、契印は不要となりますので、契印を不要とする方法として覚えておいて損はないと思います。

コラム執筆者:弁護士 細越善斉

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