遺産分割協議書作成の注意点

2019.07.16 UPDATE

コラム執筆者:弁護士 細越善斉

事例|遺産分割協議書に契印がなかったケース

父の相続です。遺言はありません。相続人は、妻である母と長男の私、次男の弟の3人で、遺産は預貯金4000万円、投資信託2000万円と自宅マンション(2000万円)です。

母には、父と一緒に住んでいた自宅マンションと、老後の生活費のため一定額の預金を取得してもらうのがよいと考え、そのことを母と弟に話したところ、2人ともそれでいいとのことでした。そこで、自宅マンションと預貯金2000万円は母が取得し、私は投資信託を、弟は預貯金2000万円を取得するとの内容で遺産分割協議書を作成し、全員で署名押印をしました。母は足が悪いので、私が母に代わり自宅マンションの相続登記について司法書士に相談したところ、司法書士より、遺産分割協議書の1枚目と2枚目に契印がないので、このままだと母名義の相続登記ができませんと言われてしまいました。

弟は地方に住んでいるため、再度押印をもらうためには時間がかかってしまいますが、そもそも、遺産分割協議書が複数ページになる場合、必ず契印をしなければいけないのでしょうか?

架空の事例です

作成の目的

遺産分割協議は、必ず書面を作成しなければ成立しないものではなく、口頭によっても成立します。しかし、口頭での成立は立証が難しく、後から成立した内容に異を唱える相続人が発生した場合、遺産分割協議の成否をめぐり、トラブルになる発展する可能性があります。

そこで、事後の紛争を防止するためにも、遺産分割協議が成立した場合、その内容を遺産分割協議書として作成しておきましょう。

形式要件はある?

遺産分割協議書は、遺産分割協議の成立を示す客観的な証拠であるとともに、相続登記や預金の解約手続では必要な書類となります。

遺産分割協議の成立を証明するという意味では、必ずしも遺産分割協議書に実印が押印されている必要はなく、また、署名欄も自署である必要はありません。しかし、例えば相続人の氏名住所がパソコンで印字されていたり、押印が認印だったりすると、誰でも作成できてしまうものであり、相続人本人の意思であったことが必ずしも明らかでないため、遺産分割協議書が無効であるとして争われる可能性があります。一方で、相続人本人が氏名住所を自署し、実印で押印している場合であれば、本人の意思であることが担保されやすいため、無効とされる可能性は格段に下がります。そこで、事後の紛争防止の観点からは、氏名住所を自署し、実印で押印することが望ましいといえます。そして、遺産分割協議書が複数ページにわたる場合は、差替え等を防止するため、契印をしておくのが望ましいでしょう。

これに対し、相続登記や預金の解約などの相続手続においては、相続人の意思を制度的に担保するために、必ず実印での押印と印鑑証明書の添付が必要とされています。そして、遺産分割協議書が複数ページになる場合には、形式要件として、必ず契印がないといけないものとされています。

以上のとおりですので、遺産分割協議書の形式要件が法律に定められているわけではありませんが、あらゆる事態・手続きに対応できるように、遺産分割協議書には、必ず自署し、実印で押印して、さらに複数ページにわたるときには契印をするようにしておきましょう。

作成時のポイント

遺産分割協議書には、誰が何を取得するのかが分かるように明確に記載してください。例えば、不動産であれば、所在・地番・地目・地積等により、また、預金口座であれば、金融機関・支店・種類・口座番号・名義等により財産を特定するのが望ましいです。

また、被相続人の氏名、本籍、最後の住所地、死亡日等など、被相続人の情報を記載し、誰の相続手続かを明らかにして、登記名義人や預金名義人との同一性を担保できるようにしておきましょう。そして、署名欄に記載する相続人の住所は、印鑑証明書の記載通りに記載するのがよいでしょう。

なお、遺産分割協議書を相続登記で使用する場合、遺産分割協議書の内容として、相続人の範囲や被相続人と登記名義人の同一性を確認しておいた方がよい場合がありますので、遺産分割協議書の作成前に、相続登記を依頼する司法書士に記載内容を確認しておくことをお勧めします。

  • 01遺産分割協議が成立した場合、遺産分割協議書を作成しておくべき
  • 02遺産分割協議書の形式要件は法律に定められていない
  • 03しかし、遺産分割協議書には、自署し、実印で押印し、契印もしておくべき

まとめ

以上のとおり、遺産分割協議の内容をもとに相続登記や預金の解約手続を進める場合、遺産分割協議書を作成する必要があります。そして、遺産分割協議書には、必ず各相続人が氏名住所を自署し、実印で押印して、さらに複数ページになる場合は実印で契印をしておきましょう。

事例のケースでは、契印がありませんので、遺産分割協議が成立したことの証拠にはなるものの、相続登記の添付書類としては形式要件を欠くこととなります。そのため、遠方にいる弟に郵送し、再度、実印で契印をしてもらう必要があります。

なお、2ページの遺産分割協議書であっても、A3の用紙に1枚でプリントアウトし作成する場合には、契印は不要となりますので、契印を不要とする方法として覚えておいて損はないと思います。

コラム執筆者:弁護士 細越善斉

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