相続法改正~自筆証書遺言の保管制度

2019.07.22 UPDATE

コラム執筆者:弁護士 細越善斉

事例|誰にも知られずに、かつ、確実に遺言を残しておきたいケース

事業をしています。家族は、妻と長男、次男、長女の5人家族で、長男が私の後継者として事業を手伝っていますので、自社株や事業関連の財産は長男に、それ以外の金融資産等もほとんどは長男に、残りを妻や次男、長女に相続させたいと思っています。

長女は最近、会うたびに「お父さん、遺言をちゃんと書いてね。私は別にいいけど、お母さんに遺してあげないと可哀そうよ。私にも少しは残して欲しいけどね。」と言ってきます。遺言書を公正証書で作成すると、内容を知った娘が書き換えるように迫ってくる可能性があるため、自分だけで作成して、遺言書の内容を秘密にしておきたいと思っています。ただ、机の引き出しに保管しておくと、長女が漁って探し出してしまう可能性がありますし、それぐらいやると思うので、机の引き出しには保管できません。かといって、誰も見つけられない場所に隠すと、いざ相続が発生しても実際に誰も遺言を発見してくれない可能性があります。。そもそも、自分だけで作成する場合、きちんと有効な遺言書を作成できるか自信もありません。

このような場合に、遺言書の内容は秘密のままで、確実に発見してもらえるように遺言書を作成する方法はないでしょうか?

架空の事例です

遺言がないのか?ないことにされているのか?

自筆証書遺言は、自書ができれば、他人の関与なくどこでも作成でき、さらに、特に費用もかかりません。そのため、手軽で自由度が高く、最も作成しやすい遺言といえます。
もっとも、遺言自体の作成に他人が関与する必要がないため、死後に遺言書の有効性が争われること(遺言無効確認請求)も少なくありませんし、そもそも、いくら探しても遺言書が発見されずに、もしくは、遺言書を発見した誰かに隠されてしまい、遺言がない前提で相続手続が進んでしまうということもあります。

遺言とは、被相続人の最後の意思表示です。そのため、遺言書があるならば、その内容に沿って相続手続は進められるべきですが、残念ながら遺言書が見つからない場合や隠された場合には、遺言がないものとして相続手続が進んでしまい、被相続人の最後の意思表示は実現されないことになってしまいます。

自筆証書遺言の法務局による保管制度を創設

そこで、改正相続法では、自筆証書遺言が発見されない、もしくは隠されるという事態を避けるために、法務局で遺言書を保管してもらえる制度を創設しました。
遺言書保管申請の管轄は、遺言書保管所と指定された法務局のうち、遺言者の住所地、本籍地、所有不動産の所在地のいずれかの法務局となります。また、遺言者の意思によらない、もしくは意思に反した遺言書保管申請が行われないようにするために、遺言書保管申請の際には、必ず遺言者本人が法務局に出頭しなければいけないとされています。

なお、施行日は、改正相続法の中で最も遅い、令和2年(2020年)7月10日とされています。

保管制度によりリスクと負担が軽減

保管制度により、自筆証書遺言自体が法務局に保管されるため、同居親族等による廃棄、隠匿、改ざん等のおそれはなくなりました。また、保管する際に、法務局の担当者(遺言書保管官)が自筆証書遺言の形式要件(民法968条参照、全文・日付・氏名の自書、押印、訂正方法等)の確認を行うため、自筆証書遺言が形式要件を満たさず無効となるリスクを軽減することができます。

そして、遺言者が死亡した後、特定の相続人の請求により遺言書情報証明書の交付等を行った場合、遺言書保管官は、他の相続人に対し、遺言書を保管している旨通知することとされていますので、各相続人が遺言書の存在を認識できることになります。

なお、遺言書保管所に保管されている遺言書については、改ざん等のおそれがなくなるため、裁判所における検認の手続自体が不要となります。

  • 01相続法改正により、法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設された
  • 02廃棄、改ざん等のおそれがなく、遺言の形式要件を満たしているかについても保管申請時に確認される
  • 03施行日は、改正相続法で最も遅い令和2年(2020年)7月10日

まとめ

以上のとおり、相続法改正により、令和2年(2020年)7月10日以降、指定された法務局において、自筆証書遺言を保管してもらえるようになりました。そして、遺言書保管制度を利用することで、遺言書が発見されないリスクや無効となるリスクを軽減することができ、さらに、手続負担を減らすことも可能となります。

事例のケースでは、形式要件を満たした遺言を作成し、内容は秘密のまま、隠蔽や改ざん等もされずに遺言書を確実に発見してもらえるようにするために、まさに遺言書保管制度を利用すべきケースと言えるのではないでしょうか。

コラム執筆者:弁護士 細越善斉

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