相続登記の申請期限は?

2019.08.20 UPDATE

コラム執筆者:弁護士 細越善斉

事例|相続発生から1年以上が経過しているケース

父の相続です。遺言はありません。相続人は、母と私(長男)、姉(長女)の3名です。遺産は、父と母が住んでいた実家不動産(2000万円)と預金1000万円です。

私も姉も実家を出て独立して生計を立てていますので、遺産はすべて母に取得してもらいたいと思い、まずは税理士に相談してみたのですが、税理士からは、基礎控除の範囲内なので相続税申告を行う必要がないと言われました。そこで、まず最初に預金解約の手続きをとり、預金全額を母に取得してもらいました。もっとも、実家については特に売却するわけでもなかったので不動産の名義変更をしていなかったのですが、父が亡くなってから1年が経過した先月、実家に父宛の固定資産税の納付書が届いた、と母から連絡がありました。

固定資産税については母が納付を行う予定ですが、そもそも、不動産については名義変更をしていなければいけなかったのでしょうか?また、名義変更の申請期限などはあるのでしょうか?

架空の事例です

不動産登記制度の目的

不動産登記制度は、土地や建物などの不動産について、どこにあり(所在)、どれくらいの広さがある(地積や床面積)といった不動産の表示に関する情報や、誰が所有しているのかといった不動産の権利関係に関する情報を公示するための制度です。

引用

不動産登記法第1条
「この法律は、不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための登記に関する制度について定めることにより、国民の権利の保全を図り、もって取引の安全と円滑に資することを目的とする。」

不動産登記により現在の権利関係を公示することで取引の安全を図ることができますし、登記を具備することで第三者に対し所有権を対抗することができるようになります(民法177条)。

申請期限はない

不動産登記法上、表題部(不動産の表示に関する情報)については登記が義務付けられていますが、権利部(不動産の権利関係に関する情報)については登記が義務付けられていません。そして、相続により不動産(所有権)を取得したことは、不動産の権利関係に関する事項であり権利部に登記される内容ですので、必ずしも登記が義務付けられているわけではないのです。

そのため、遺産分割協議が成立し不動産を取得した場合でも、そもそも登記義務がない以上、いつまでに名義変更(相続登記)をしなければいけないという申請期限もないため、相続登記が行われないことが頻発するわけです。
相続登記の際には登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)も負担しなければいけないので、その点も、相続登記が行われない1つの要因だと思われます。

相続登記のススメ

相続登記に申請期限はありませんが、遺産分割協議により法定相続分と異なる割合で不動産を相続したときは、相続登記をしておかないと、自分の法定相続分を超える持分の取得については第三者に対抗することができません。
また、相続登記が放置された場合、いざその不動産を処分したいと思っても、その時点で遺産分割の当事者となる相続人が多数になってしまい、事実上その不動産を処分できなくなってしまう、ということにもなってしまいかねません(この点は、後述の所有者不明土地問題をご参照ください。)。そこで、相続登記は早めに行うことをお勧めします。

なお、改正相続法では、相続による権利の承継について、遺産の分割によるものか「相続させる」旨の遺言か等にかかわらず、自身の法定相続分を超える部分については、登記を備えないと第三者に対抗することができないことが明文化されました(改正民法899条の2第1項)。

参考

法務省ホームページ:相続の効力等に関する見直しについて

所有者不明土地問題が深刻化

平成30年11月15日に「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が施行されました。これは、先程触れたとおり、相続登記が放置されることで現在の相続人が誰かわからなくなり、事実上利用や処分ができなくなってしまった土地の有効活用を認めるために制定された法律です。

所有者不明土地の面積割合は九州全土に達するともいわれていますので、いかに深刻な事態かはお分かりいただけるのではないかと思います。
この法律では、例えば、一定の要件のもとに、都道府県知事の裁定手続きを経て、最長で10年(延長も可能です)、その土地に利用権を設定し、道路、学校、病院、公園等の「地域福利増進事業」を行えることが規定されました。また、所有者不明土地については、収用委員会による審理手続きなど土地収用法の手続を省略して、都道府県知事の裁定手続きにより、手続期間を短縮して土地を収用できるようことも規定されました。

さらに、相続登記を促す制度も規定されるなどして、所有者不明土地がこれ以上拡大することを防止するための仕組みも用意されています。

  • 01相続登記には申請期限がない
  • 02しかし、相続登記は早めに行っておくべき
  • 03相続法改正により、法定相続分を超える権利の承継はすべて対抗問題とされた

まとめ

以上のとおり、相続登記に申請期限はありませんが、所有者不明土地の拡大を防止するためにも、また、法定相続分以上の持分の取得についてはすべて対抗問題となりましたので、その観点からも、相続登記は速やかに行っておいた方がよいといえます。

事例のケースでは、名義変更(相続登記)の義務はありませんが、遺産分割協議により母が不動産を取得しているため、母が長男・長女の法定相続分まで取得したことを第三者に対抗できるよう、速やかに相続登記を行うことをお勧めします。

CST法律事務所では、相続登記を専門的に取り扱う司法書士法人チェスターと連携・協力関係にありますので、相続登記のご依頼をご検討の方は、司法書士法人チェスターにお問い合わせしてみてはいかがでしょうか。

コラム執筆者:弁護士 細越善斉

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