遺留分が侵害されている場合の対処法は?

2019.08.20 UPDATE

コラム執筆者:弁護士 細越善斉

事例|遺言で1人の相続人にすべて「相続させる」と記載されていたケース

母の相続(平成30年12月死亡)です。父は既に他界しているため、相続人は兄(長男)と姉(長女)と私(次男)の3人です。遺産は、預金2000万円と自宅不動産(3000万円)です。債務はありません。なお、母は生前、兄夫婦と同居しており、兄に対し、1000万円を生前贈与したそうです。そのことは、兄も認めています。

先日、49日の法要があったので、母の相続手続について兄に聞いたところ、兄から、母の遺言が発見されて「すべての遺産を兄に相続させる」との内容であったため、姉や私に渡す遺産は何もない、母の相続についてはこれ以上何も言うな、と言われてしまいました。。

遺言があるのならしょうがないですが、同じ子供なのに、兄だけが生前贈与を受けて遺産もすべて取得できるとなると、あまりにも兄弟間で不公平ではないかと思います。このようなケースでは遺留分を請求できると聞いたことがありますので、請求したいと思っているのですが、具体的にどのように行えばよいのでしょうか?

架空の事例です

遺留分の割合

遺留分とは、遺言によっても侵害されない、相続人として、最小限度、必ず相続財産を取得できる権利です。遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められます。遺留分の割合は相続人の立場によって異なりますが、子どもが相続人の場合、相続財産の1/2が遺留分の対象となる財産となります。そして、各相続人の遺留分割合は、遺留分対象財産に自己の法定相続分を掛けた割合となります。

事例のケースでは、長女・長男・次男の法定相続分はそれぞれ1/3ですので、各相続人の遺留分割合は、相続財産の1/6(1/2×1/3)となります。

遺留分侵害額の算定方法

遺留分侵害額は、遺留分額から、遺留分権利者の取得した相続財産及び特別受益を控除して算出します。遺留分額は、相続財産(プラスの財産から債務を控除したもの)の総額に、相続開始前1年内に行われた贈与、遺留分権利者に損害を与えることを知って行った贈与(民法1030条)及び特別受益(民法1044条、同904条)を持ち戻し、遺留分割合を掛けて、遺留分権利者が承継する債務額を加算して算出します。

事例のケースでは、例えば次男の遺留分額は、相続財産(預金2000万円と自宅不動産3000万円)+長男への特別受益1000万円の合計6000万円×遺留分割合1/6=1000万円となります。
そして、次男は、相続財産を何も取得していませんし、母から生前贈与を受けていないため、遺留分額1000万円が侵害されていることになります。

遺留分権の行使方法

遺留分を侵害された相続人は、遺留分を侵害した相続人、受遺者、受贈者に対する意思表示により、遺留分権の行使(遺留分減殺請求)をします(民法1031条)。遺留分減殺請求の方法としては、必ずしも裁判を起こす必要はなく、裁判外の意思表示で行うことができます。もっとも、遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与があったことを知った時から1年間行使しないときは時効によって消滅してしまうため、時効前に権利行使をしたことを証拠化しておくために、内容証明郵便で遺留分減殺請求の意思表示をしておくのが望ましいといえます。

遺留分と相続税

そして、遺留分減殺請求の結果、相続財産を取得した相続人は相続税の修正申告を、相続財産が減少した相続人等は相続税の更正の請求をすることができます。

相続法の改正(遺留分侵害の金銭債権化・算定方法の見直し)

なお、改正相続法では、遺留分制度が見直されています。
まず、遺留分を侵害された場合、その侵害を回復するための権利を金銭債権化し、お金を請求できるだけの権利となりました。また、相続人に対する生前贈与についての特則を設け、相続人が受けた特別受益については、相続開始前の10年間にされたものに限り、遺留分額を算定するための価額に参入することになりました。
もっとも、侵害額の算定にあたっては、改正後も考慮される特別受益の額には時的限界はなく、10年以上前の特別受益も控除の対象となります。

この改正法は、2019年7月1日以降に発生した相続について適用されます。

  • 01遺留分侵害額の算出にあたり、持ち戻す特別受益等の有無を把握する
  • 02遺留分減殺請求の意思表示は、内容証明郵便で行うのが望ましい
  • 03相続法の改正により、遺留分制度が見直された

まとめ

以上のとおり、遺留分権の行使方法としては、まずは裁判外で、遺留分を侵害している相続人等に対し、遺留分減殺請求の意思表示を行うことになります。

事例のケースでは、長女・次男から長男に対し、それぞれ、遺留分減殺請求の意思表示を内容証明郵便により行っておくのがよいでしょう。実際は、不動産の評価等で争いになることも少なくないため、話し合いでの解決が難しい場合、調停や訴訟での解決を図らなければいけないケースも少なくありません。

いずれにしても、時効にならないように、早めに遺留分減殺請求の意思表示をしておくことをお勧めします。

コラム執筆者:弁護士 細越善斉

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