法定相続情報証明制度の内容と手続

2020.02.26 UPDATE

コラム執筆者:弁護士 細越善斉

事例|相続人にも相続が発生し、相続関係が複雑になってしまったケース

先日、父が亡くなりました。相続人は、私と母の2人です。

父は3人兄弟の長男でしたが、叔父(次男)は生涯独身のまま、一昨年亡くなりました。叔父(次男)の相続人は、当初、父(長男)ともう一人の叔父(三男)の2人だけでしたが、先日父が亡くなったため、現在、私と母、叔父(三男)の3人が叔父(次男)の相続人となっています。

これから、叔父(次男)名義の預金解約等の相続手続を行う必要があるのですが、法定相続情報を取得すれば、手続が楽だと聞きました。そこで、法定相続情報を取得したいと思うのですが、そもそも、法定相続情報はどのように取得すればいいのでしょうか。また、法定相続情報にはどこまでの情報を載せることができるのでしょうか。

架空の事例です

法定相続情報証明制度とは

そもそも法定相続情報証明制度とは何か?

法定相続情報証明制度とは、法務局の登記官に法定相続情報一覧図を認証してもらい、相続人がその写しの交付を受けられる制度です。法定相続情報一覧図とは、被相続人(亡くなった方)と配偶者、子ども、親、兄弟姉妹などの法定相続人の関係が一覧で示されている家系図のような図面です。

不動産の相続登記や銀行預金の解約手続を行う場合、原則として、被相続人の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本を準備して、その原本を法務局や銀行に提出または提示しなければいけません。単純な相続関係で戸籍等の通数が少なければそれほど負担はありませんが、相続人が多数の場合や相続関係が複雑な場合は、戸籍等から正確に相続人の範囲を確定させ、さらに戸籍等のすべてを各所に提出等をすることは負担となります。

法定相続情報証明制度を利用すると、法務局の登記官が「この被相続人の相続関係はこの内容で間違いありません」と法定相続情報一覧図に認証してくれます。相続人は、法定相続情報一覧図を提出すれば、今後の各種の相続手続ごとに戸籍等をわざわざ提出または提示しなくても、各種の相続手続きを進めることができるようになります。

たとえば、法定相続情報一覧図を提示すれば、預金の解約等を行う場合に戸籍等の原本を提示する必要なく預貯金の解約や払戻しを行うことができますし、証券会社における名義変更の手続でも、戸籍等を提示する必要がなくなります。

法定相続情報証明制度が制定された背景

法定相続情報証明制度の運用が開始されたのは、平成29年(2017年)5月29日からであり比較的最近です。

この制度が創設された理由はいくつかありますが、主には相続人に不動産の相続登記を促すためといわれています。近年、不動産を相続しても名義変更の相続登記をしないで放置する方が増えていてます。これにより、所有者不明土地問題が深刻化し、固定資産税の徴収や老朽化に伴う危険の発生等が社会問題化しています。
そこで、国としても、相続関係の証明を容易にして可能な限り相続登記を促進しようと考え、法定相続情報証明制度を創設したのです。法定相続情報証明制度を利用するには法務局で認証を受けねばならないので、もともとは、不動産の相続登記と一緒に行うことを想定した制度といえます。そのため、法定相続情報証明制度が普及すれば、登記されずに放置される不動産も減るのではないかと見込まれています。

また、相続人側にとっても、相続登記に限らず、銀行での預貯金払戻しなどの際に、都度戸籍等の原本が必要となっていましたが、法定相続情報証明制度を利用すれば、法定相続情報一覧図の提出のみで、戸籍等の原本は不要になるので、より相続手続を行いやすくなりました。

このように、法定相続情報証明制度は手続側と相続人側の双方にメリットがある制度として、運用が開始されました。

法定相続情報証明制度の手続の流れ

法定相続情報証明制度利用の具体的な手続きについては、以下でご確認ください。

参照

法務局ホームページ:「法定相続情報証明制度の具体的な手続について

1.戸籍等の必要書類を集める

まずは、法定相続人が「被相続人の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本類」を集めなければなりません。
戸籍謄本や除籍謄本、改正原戸籍謄本は、現在の本籍地から、転籍前の本籍地を辿っていき、出生まで遡って取得します。本籍地のある(もしくはあった)役所に直接出向いて取得することもできますが、遠方の場合には、郵送により取得することを検討しましょう。

2.法定相続情報一覧図を作成する

次に、法定相続人が「法定相続情報一覧図」を作成します。法務局が発表しているひな形があるので、参考にするとよいでしょう。

参照

法務局ホームページ:「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例

法定相続情報一覧図に「相続人と被相続人の続柄」や「相続人の住民票上の住所地」を記載しておくと、後に相続税の申告や不動産の相続登記をするときに添付書類の省略等ができます。また、被相続人については、最終の住所地だけではなく最終の本籍地も記載できます。

参照

法務省ホームページ:「~法定相続情報証明制度について~

3.申出書に記入し、登記所へ申し出る

戸籍等を準備し法定相続情報一覧図を作成したら、申出書に必要事項を記入のうえで、法務局に持参し、もしくは郵送で、登記官に対し「法定相続情報証明制度」の利用を申請します。不動産の相続登記と同時に申し出ることも可能です。

相続人が自分で戸籍謄本類の収集や法定相続情報一覧図の作成、申出などの手続きを行うのが大変な場合、弁護士や司法書士に依頼する方法もあります。

4.登記官が内容を確認

法定相続情報証明制度の利用申出があると、法務局側で、戸籍等から相続発生時の相続人の範囲を確認します。そして、提出された法定相続情報一覧図の内容に間違いがなければ、登記官が法定相続情報一覧図を法務局に保管し、相続人に対し登記官の認証印のついた法定相続情報一覧図の写しを交付します。その際、相続人から提出を受けた戸籍謄本類は相続人らへ返却されます。

なお、法定相続情報証明制度の利用に手数料はかかりません。

5.相続人は各種の相続の場面へ利用

登記官認証印のある法定相続情報一覧図を取得したら、相続人は、同一覧図を銀行における預貯金払戻しや証券会社における名義書換などの各種の相続手続に利用できます。

法定相続情報一覧図の活用場面

登記官の認証を受けた法定相続情報一覧図は以下のような場面で利用できます。

金融機関における相続手続き

銀行や信用金庫などの金融機関で預貯金の解約払戻しを受けたり、名義変更したりするときに法定相続情報一覧図を利用できるケースがほとんどです。

証券会社における株式の相続手続き

相続財産に上場株式が含まれており、証券会社で株式の名義変更や口座の移管手続きを行う際にも法定相続情報一覧図を使用できることがほとんどです。

非公開株式の名義変更

非公開株式を相続したら、株式発行会社へ申請して名義変更しなければなりません。その際にも法定相続情報一覧図を使える可能性があります。ただし会社によって対応が異なるので、利用できるかどうか事前に確認することが必要です。

ゴルフ会員権の名義変更

被相続人が所有していたゴルフ会員権の名義変更の際にも法定相続情報一覧図を使える可能性がありますが、事前確認しましょう。

出資金の名義変更、払い戻し

組合などに対する出資金がある場合、名義変更や払戻しをする必要があります。その際にも法定相続情報説明図を利用できる可能性があります。

各種積立の名義変更、払い戻し

被相続人が金やその他の積立を行っていた場合には相続人への名義変更や払い戻しが必要です。その際にも法定相続情報一覧図を使える可能性があります。

車の名義変更、廃車の手続きなど

車の名義変更や廃車の際には、法定相続情報一覧図により手続きを進めることが可能です。

相続税の申告書への添付

法定相続情報一覧図に被相続人と相続人の続柄を記入していれば、相続税の申告書の添付書類として利用できます。

相続登記における活用

法定相続情報一覧図の申請の際に不動産の相続登記を行わなかった場合、後に相続登記をする際に法定相続情報一覧図を利用できます。法定相続情報一覧図に「相続人の住所」を書き込んで認証を受けておけば、相続登記の添付書類である相続人の住民票の提出を省略できます。

法定相続情報一覧図の注意点

法定相続情報一覧図は、被相続人が死亡した時点における相続関係を証明するものです。そのため、相続開始後に相続人の一部にさらに相続が発生していても、相続人に発生した相続の内容を法定相続情報一覧図に反映することはできないため、法定相続情報一覧図の内容と現在の相続人の範囲が一致しない場合が生じますので、注意が必要です。

その場合は、当該相続人を被相続人として改めて法定相続証明制度を利用し、当初の法定相続情報一覧図と次の相続の法定相続情報一覧図の2通を取得して、各種の相続手続を行うのがよいのではないでしょうか。

  • 01法定相続情報一覧図を提出することで、各種の相続手続を行うことができる
  • 02法定相続証明制度は、相続発生時の相続関係を証明する制度である
  • 03相続人にさらに相続が発生した場合、当該相続人の法定相続情報一覧図を改めて取得する

まとめ

いかがでしたか。法定相続証明制度が創設されたことにより、法務局や銀行等の各機関に法定相続情報一覧図を提出することで、戸籍等を提出することなく各種の相続手続を行うことができるようになりました。これにより、相続人が多数であったり、相続関係が複雑なケースでも、一般論として、相続人や行政、金融機関等の手続的負担が軽減されることになります。

事例のケースでは、叔父の相続関係は複雑と思われますので、相続手続を行うにあたり、相続人側及び金融機関側のいずれにとっても戸籍等から相続人の範囲を正確に把握することの手続的負担が生じます。もっとも、法定相続証明制度を利用することにより、一度法定相続情報一覧図が認証されれば、その後の各当事者の手続的負担を大幅に軽減することができることになります。さらに、費用もかかりません。

是非、法定相続証明制度の利用をご検討されてみてはいかがでしょうか。

コラム執筆者:弁護士 細越善斉

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