遺産相続の基礎知識14同族会社内の紛争

基礎知識14-1名義株式の帰属

名義株式とは、他人名義を借用して、株式の払い込みがなされた株式のことをいいます。平成2年改正前商法では、株式会社設立時の発起人を7人以上とする必要があり(同法165条)、この要件を満たすために、名義の借用が行われるというケースはよくありました。名義株式の帰属について、判例は、名義人ではなく実際に払込みを行った者に帰属すると判示しています。

引用

『他人の承諾を得てその名義を用い株式を引受けた場合においては、名義人すなわち名義貸与者ではなく、実質上の引受人すなわち名義借用者がその株主となる』(最判昭和42年11月17日民集21巻9号2448頁)。

名義株式の問題は、例えば会社経営者が亡くなり、その相続人が遺産たる自社株数を確認したところ、経営者以外の名義になっている自社株式が発見され、相続人と名義人との間で同株式の帰属を巡り争う、という形で、相続発生時に顕在化することが少なくありません。

そして、当事者間で名義株式の帰属について話し合いがつかなければ、最終的に株主権確認訴訟を提起して、裁判所の判断を仰ぐことになります。

誰が実質上の株主かを認定するにあたっては、株式取得資金の拠出者、名義貸与者と名義借用者との関係及びその間の合意の内容、株式取得の目的、取得後の利益配当金や新株等の帰属状況、名義貸与者及び名義借用者と会社との関係、名義借りの理由の合理性、株主総会における議決権の行使状況などを総合して判断されることになります(東京地判昭和57年3月30日参照)。

基礎知識14-2株式の譲渡

ある同族会社の株式について、例えば既に退任した元役員など複数人が保有しているような場合、分散した株式を後継者に承継させることができないとなると、円滑な事業承継の実現に支障が生じかねません。そこで、そのような場合には、事業承継実行の前提問題として、元役員の株主から、株式の譲渡を受けておいた方がよいでしょう。

普通株式については、会社側から株主に対し、株式譲渡を法的に強制することはできません。そのため、株主の合意を得て譲渡をしてもらう必要がありますが、非上場株式を譲渡する場合、株価について客観的指標がなく、譲渡代金をいくらとするかについて、当事者間で争いになることが少なくありません。

そこで、まずは純資産価額方式や類似業種比準方式、配当還元方式など会社規模や株主構成に適した計算方法により適正株価を算出したうえで、スムーズに株主の合意を得るためにも、同株価に一定のプレミアムを上乗せした価格を譲渡代金として提示することも検討してみてもよいかもしれません。

基礎知識14-3取締役に対する任務懈怠責任の追及

会社と役員の関係は委任契約であり(会社法330条)、役員は会社に対し、善管注意義務(民法644条参照)及び忠実義務(会社法355条)を負っています。そして、役員がその義務に違反、すなわち役員としての任務を懈怠した場合、任務懈怠責任として会社に対し損害賠償責任を負います(会社法423条)。

事業承継の実行にあたり、会社に法的課題がある場合には事業承継前に解決しておくべきといえます。そのた、任務懈怠のある役員に対し、何ら任務懈怠責任が追及されていない場合には、事業承継前に任務懈怠責任の追及を検討することになります。

役員の任務懈怠責任は、事業承継の前提問題として顕在化することが少なくありません。

基礎知識14-4取締役・従業員の不祥事対応

取締役や従業員が、例えば業務上保管する会社のお金を私的に流用した場合、刑事上は業務上横領罪(刑法253条)にあたりますが、民事上は、不当利得返還ないし不法行為の損害賠償の責任を負うことになります。

事業承継の実行にあたり、会社に法的課題がある場合には事業承継前に解決しておくべきといえます。そのため、取締役や従業員の不祥事が発覚した場合には、事前に不祥事に対する責任追及を検討することになります。

取締役・従業員の不祥事対応は、このように、事業承継の前提問題として顕在化することが少なくありません。

弁護士への無料相談はこちらCONTACT US

ご相談内容などをご入力の上、お問い合わせください。後日ご連絡差し上げます。
※ご入力いただいた個人情報は、お問い合わせに対応する目的の範囲内でのみ利用させていただきます。

カテゴリーから記事を探す

FOLLOW US

  • Facebook
  • Twitter